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遅まきながらも愛校心 [日常の一コマ]

昨日、卒業以来疎遠になっていた我が母校、出身大学に行ってきました。
実は様々な諸事情により、私の通っていた学科は2006年度の卒業生を最後に閉鎖。
年度が変わる明日からは、その存在自体がなくなってしまうのです。

私が通っていたのは「福祉工学科」という学科で
1996年頃、そんな名前を掲げた学科のある大学はただ一校、
この大学だけでした。
私は当時、「ユニバーサル・デザイン」の勉強がしたくて、
この大学にある

   「福祉工学科」 と 「造形工学科」

のどちらに通うべきか・・・。必死に悩んでいました。

前半の「ユニバーサル」に重きをおけば、「福祉工学(人間中心工学)」
後半の「デザイン」に重きをおけば、「造形工学(工業意匠)」。

最後の決め手は、友人の存在。
私の高校時代の友人は工業デザイン志望だったので、それなら私は・・・、という理由で
「福祉工学科」を選びました。
もしかすると、将来、彼女と一緒に仕事が出来るかもしれないし、
そしたら専門分野が別であったほうが何かと便利。

そう考えました。

今でこそ、「ユニバーサル・デザイン」、「バリアフリー」という言葉は一般化しているけれど
それも2000年以降のことのように思います。
当時はまだまだ知名度も低く、企業も今ほど積極的に取り組んでいたとは思えない状況。
だから、この学科もかなり先進的であったことは言うまでもありません。

そして、今回、奇しくも閉鎖されるのはその「福祉工学科」と「造形工学科」。
どちらを選んでいても閉鎖されていたことから、私の選択はどちらでも正解!
(ある意味、不正解・・・。)であったことが裏づけされたような気がしましたね。

そんな学校で学んだことは、今、思い返すだけでも盛りだくさんでした。
旋盤やフライス盤といった機械加工もしたし、回路設計実習でハンダ付けもしました。
CAD/CAM実習もあったし、昔ながらのドラフターを使っての製図もやりました。
パソコンでプログラムを作ってエンコーダーの信号を取り込む実習もありましたし。
そういえば、私はシーケンサーのプログラムを組むのが大好きでしたね。(笑)

ほかにも、医学、心理学、義肢装具製作(義足や義手)の実習もしたし、
機械、電気・電子、情報etc人間にとって便利で快適な「モノ」を作る上で必要だと思われる、
ありとあらゆる学問の基礎部分をちょっとずつ齧っていたことになります。
骨の名前を覚え、車いす設計のさわりをやり、トランジスタの勉強をし、小さいロボットも作った。
義足製作の実習では、石膏で足型を取り、樹脂で成型をする。
これは民間企業での実務研修でもお世話になりました。
 (その後、ちゃんとしたお礼が出来ず、失礼したままなのが今でも気がかりです。)

当時、将来は義肢装具士になろうかと本気で迷っていたことも思い出します。
最後は結局、再度専門学校に行きなおさなければならないという点で諦めました。
我が家には齧っても良い脛など存在しなかったし、大学の学費は奨学金で賄っていたから
卒業後はすぐに働かないと返済できない。その上、さらにまた学費を借りてくる勇気は
さすがの私にもちょっとなかったですね。

とにかく、大学で学んだことはここに書いただけでもほんの一部。
当然、たった4年間で全てを網羅するには時間が足りず、
それでも色々な経験をさせていただいた。

まぁ・・・。とは言えですね。

実のところ、私はほとんど大学には行かず(苦笑)、
写真を撮ったり、映画の学校に通ったり・・・と他のことばかりに気を取られていたのですが。

 って、あれ??美談じゃなかったの!?

だって当時は工学部ゆえの工学全般の話がイマイチ好きになれず、逃げてばかりいました。
そして、本当はちょっと美大に行って、写真もやってみたかったいう思いもネックになっていて
自分の気持ちを上手く消化できなかったように思います。

 なんだよ、それは!(苦笑)

でも、最初に就職したときに、社長面談で「やってみたいことは?」と訊かれて
 「視覚障害者の方に色という概念を伝える方法を研究したい。」
 (いわゆる感覚代行という分野。)
と伝えていることから、やはり、根本では「福祉工学」というものに誇りをもっていたと思います。
 「色(写真・映像)+福祉工学」。
我ながら、良い方向性だと思いますね。(今、やるならそれだな。。(笑))
だからここ最近、今更ながらにして

   「もっと勉強しておくんだった・・・。」

とか思う。
フフフ。大人はみんな、そんなもんですねぇ。。

まぁ、そんな様々な思い入れ深き出身学科が本日付けでなくなるとのこと。
最初にそれを聞いたときには一抹の寂しさをおぼえました。
卒業以来疎遠だったのにも関わらず、なくなると聞くと急に寂しい。なんて現金な・・・。
だけど、取り壊される前に一度、行ってみよう。そう思っていて。

そして、運良く昨日はたまたま仕事が休みだったので、私は意を決してアポなしで訪ねました。
もちろん、それではどなたにもお会い出来ないだろうし、
写真など撮らせて頂いて、人知れず退散してくるつもりでした。

久しぶりに降り立つ最寄駅。
駅前が随分と開発され、空き地だったところには高層マンションが建っていて。
一瞬、面影を見失う。前はここ、なんだったっけ???

ふと思い返せば、ちょうど11年前のこの日。私はこの地に引っ越してきたのでした。
実家から2時間くらいかければ通えなくもないだろう距離だったけれども、
親を説得して、学校の敷地内にある寮に住むことにしたのです。
寮費は格安だったので、有難いことに、奨学金だけでも学費と寮費が賄えたのが大きいですね。

そんな懐かしい学生寮や校舎などをウロウロと見て歩くと
基本的には当時のままのものが多い。
そして、私が一番お世話になった棟へ。取り壊されてしまう実習棟。
う~ん。。懐かしいなぁ。。
車いすや旋盤、義足などを見て、館内を徘徊していると声を掛けられる。

 「あ?えっと、○○さんだよね?」
 「あ!!!そうです!覚えていてくださったんですか!」

うわぁ!最後に研究室で一番お世話になっていたH先生だ!
こんなにあっさりお会いできるとは・・・。
そして、S先生もいるよ、なんておっしゃって、S先生の部屋まで。
S先生には卒業後もお会いしていたので、アポを取るならこの先生だとは思っていたのですが
なんとなく、連絡しそびれてしまっていたので嬉しい。
H先生は精密機械、S先生は機械加工。
どちらも落ちこぼれの私が多大なご苦労・ご心配をおかけした先生方で、
また、同時に気さくな話しやすい先生方でもありました。

そして、私の現状(仕事・病気)を話し、ここが壊されちゃうなんて・・・。

 先生:「残りますよ。」

 「へ???残るの???」

どうやら、学科は閉鎖されるけれども、建物自体は残るとのこと。
私はてっきり全部取り壊されるのかと・・・。アタタタタ。また私特有の勘違い。(笑)

あ~。。でも良かった。ちょっと一安心。
先生方の部屋もそのまま使用するとのことなので、
また訪ねていけば、今と変わらずに迎えてくれることでしょう。本当に有難いことです。
 (ですよね?先生!)

          
          
               
          
               
          
          
          
               

いやぁ。久しぶりの母校に、遅まきながらも愛校心。
今までお世話になりました。どうもありがとう!
そしていつか、恩返しが出来るといいなぁ~。なんて、思いました。


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コメント 5

これ

俺の学科も、研究講座の名前も卒業後にすでに2回は名前が変わってしまいましたね。

俺も久しぶりに研究室に顔出すかなぁ
by これ (2007-04-02 07:33) 

9日を忘れない

こんにちは。
私の大学はまだありますが、高校はなくなりました。
公立の普通科の女子高だったんですけど。
共学になりました。
当然、○○女子高等学校は改名されました。
場所も制服も変わったようです。

特に、さびしくはないけど、「報告ないぞ」と当時は思っていました。
by 9日を忘れない (2007-04-07 16:44) 

9日を忘れない

とある病院の循環器の先生が管理なさっているブログで「KAMONOHASHI」サンのコメントを見つけました。
まさか、かものはしさんでは?
by 9日を忘れない (2007-04-17 21:09) 

まつ

はじめまして。
福祉工学科最後の卒業生のまつです。
卒業してからそれほど時間が経っておりませんが、福祉工学科がなくなってホントに悲しいです。
先に卒業された先輩達の方がその想いは強いと思いますが。
まぁ~元気にやっていきましょう。
by まつ (2007-04-22 01:51) 

かものはし

Dear これ
 お久しぶりです。その後、お元気ですか?
 これさんの大学は大きいから再編の回数も多そうですね。
Dear 9日を忘れない
 コメントを2つも頂いていたのに、お返事が遅れてごめんなさい。
 まず、自分の出身校が何の音沙汰も無く閉校されていたりとか
 寂しいですよね。一筆ちょうだい!って思いますもん。
 それから、循環器の先生のなさっているブログ。
 う~ん。。。私は「かものはし」をローマ字で書いたりしないと思うので
 別人かもしれません。ごめんなさい。
Dear まつ
 あれ!はじめまして。卒業生でしたか。。ブログって凄いですね。
 そう。学科のことは、だってこないだ20周年記念をやったばかり
 だったでしょう?っていうインパクトも大きかったように思います。
 まぁ、ただ「福祉工学」という分野が無くなったわけではないので
 勉強しようと思えば、今でも出来るんですよね。
by かものはし (2007-06-17 14:29) 

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