ある日の日記（その３）＊「納豆」

ある日の日記（その３）。

　　　「納豆」

　　　納豆を買った。
　　　わらにくるまれている本場の納豆を買ってみた。
　　　初めて食べるわら納豆は、本当に直にわらに納豆がくるまれていた。
　　　ともするとありがちな、
　　　ビニールにくるんだ上に飾りのようにわらがくっついているのを想像していた私は
　　　思わず、「うわっ！」と言ってしまった。

　　　ところで、先週彼氏から送られてきた荷物の中には
　　　ラーメンズのDVDとDEF TECHのCDが入っていた。
　　　思い出の一切合切を詰め込んで送り返された段ボールを見て、
　　　私は少し悲しくなった。

　　　彼の元には何か残っているのだろうか？

　　　私は納豆を食べて泣いた。
　　　彼は納豆が嫌いだったから。
　　　こういう小さなすれ違いが私達を遠ざけたのだろうか？

　　　届いたメールに「歯車が食い違っただけだ・・・。」と、書いてあった。

　　　こないだ観たドラマでは、本当は愛し合っているのに
　　　別れを決めた恋人同士が出てきた。
　　　
　　　すごく分かる気がして・・・。

　　　泣いた。　　　
　　　
　　　ねぇ。

　　　なんで一緒に歩めないんだろう？
　　　なんで好きだけじゃダメなんだろう？？？

　　　大人になってする恋は二人の純粋な想い以上に
　　　しがらみや責任や他のまた別の愛すべき人のために
　　　軽んじられ、疎んじられ、「夢だった・・・。」なんて思い込まれて、
　　　心の隅っこに追いやられる。

　　　私は今でも多分あなたが好き。
　　　だって、嫌いになんてなれないよ。

　　　だからこそ、私達は別の道を行き、
　　　お互いの幸せのために、
　　　自分の思う正しいほうへ進んで行くだけ、なのだ。

　　　どうか私より幸せでいて下さい。
　　　ずっと幸せになって下さい。

　　　私がもっと慎ましくて、あなたの何歩か後ろを歩けていたら
　　　あなたはずっと私の前を歩いていてくれた？

　　　納豆は混ぜれば混ぜるほど糸を引き、
　　　たれと芥子と相まって、とても美味しかった。

　　　私は泣きながらそれを完食し、
　　　「ごちそうさま。」と、独りつぶやく。

　　　いつかまた別の愛しい人と、
　　　納豆を食べたり、食べるのをためらってみたりするのだろうか？

　　　そんな日が来ることを願って。

　　　完。

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